生きづらいふ

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マイノリティによる「自分は特別、他人は凡庸」という逆差別

 読みたい本は興味があるうちに!今、僕が読みたい本BEST5 - 生きづらいふ

上記事で紹介していた本をさっそく手に入れて読んだ。読んだのはこれ。

 

もっとも読みたかった本。たまたま寄ったBOOK OFFで見つけたので購入。ページ数が200pほどということもありすぐ読みきってしまった。

 

というわけで、初めて本を読んだあとにブログを書いてみる。

 

 

この本は、マツコ・デラックスさんと池田清彦さんの対談を本にしたもの。マツコ・デラックスさんについては説明は不要だろう。一方、池田さんに関しては知らない人もいると思う。

 

僕もちょっと前までは池田さんについてほとんど知らなかった。池田さんは、フジテレビのホンマでっか!?TVに出演している生物学者だ。その番組を見たことがある人なら、一度は目にしたことがあるかもしれない。思い出せない人はググって見てほしい。顔を見れば思い出すかもしれない。

 

ホンマでっか!?TVで共演した二人は、お互いに強く関心を持ったそう。二人とも、自分はこの社会ではどちらかというと「ヘンな人」、マイノリティであると自覚しているらしい。お互い「ヘンな人」同士、じっくりと話してみたいと思っていたそうで、それが実現して誕生したのがこの本。

 

マツコさんがマイノリティであるのは、言わずもがなである。一応、言っておくとマツコさんは「ゲイで女装癖の持ち主」。ゲイの時点ですでにマイノリティなのに、さらに女装癖があることで、マツコさんはマイノリティの中のマイノリティなのだそう。

 

一方、池田さんは職業こそ生物学者というお堅い肩書きを持っているが、一般的な学者のイメージとはかけ離れた人物だ。口癖は「めんどくせえ」。趣味は虫捕り。テレビで、若いころにホモのおじさんと援助交際していたというエピソードを何のためらいもなくさらっと言ってのけるメンタル。この本を読むと、池田さんも独特な個性を持つマイノリティな人間であるということがよく分かる。

 

 マイノリティな二人が日本の社会について物申ししたり、マイノリティとして生きていく方法などを語り合っていくという内容なのだが、とてもおもしろい。随所におもしろい発言が散りばめられていた。ブログに書くために気に入った箇所をメモしておいたのだが、あまりに多くメモしすぎたため、一つだけピックアップして紹介することにした。

 

 もっとも興味深かったのが「自分たちは特別、という意識から生まれる逆差別」というテーマの会話だ。以下に少し引用する。

 

マツコ「マイノリティの人の中で、マジョリティを差別する意識が、とても強くなることもあるわけ。少数派には、「自分たちは特別だ」という意識が芽生えてしまうときがよくある。多数派に対しての「あいつらは凡庸で、私たちは非凡」という変な差別意識のようなものが生まれたりするのよ。」 

 

さらにマツコさんは、マイノリティの人がデモ行進するときにも、「自分たちが特別で、他の人は凡庸」という意識が垣間見えると言っている。はじめは、平等じゃないから、差別されているから、社会的制度を改正してください、という目的のデモだったはずが、「私たちは特別な存在です」というアピールに変わっていることがあると。

 

このマツコさんの考えには、思わずはっとさせられた。まさに図星。僕の痛いところを突かれたような感覚。

 

僕はさんざんこのブログで、「生きづらい生きづらい」と言って、

なぜ社会は個性を無視するのか?俺は俺なのに! - 生きづらいふ

コミュ障の人生を遊園地でたとえてみると分かりやすくなる - 生きづらいふ

日本の教育は学生に「お金=幸福」という方程式を教えている - 生きづらいふ

こんな記事を書いてきた。社会は間違っている、だとかコミュ障の生活ってこんななんだぜ、と主張する記事だ。

 

「生きづらい」と嘆く中にも、「そんな自分は特別」という意識があったことは否めない。そして、「そんな僕以外の人は、間違っている」という差別意識があったようにも思う。だからこそ、社会は間違っていると主張したし、コミュ障の辛さを理解してもらおうともした。

 

そのことに気づいてとても恥ずかしくなった。結局、「自分のことを理解してくれ!」という醜い叫びを今まで書いてきたことになる。全部が全部、そうではないが、 いくつかそういう記事を書いてきたことも事実だと思う。

 

池田さんがこんなことを言っていた。

マイノリティの人たちが「私たちのことを理解してくれ」とマジョリティに言うのはおかしいね。だって、理解できるわけなんてないんだもの。

(中略)

他人のことなんてわかりっこないよ。誰だって他人の「ほんとうの気持ち」なんか、わかるわけがない。マジョリティ同士だってわからないし。

 

確かにそうだ。人はみんな他人のことなんて分からない。それなのに、「自分のことを理解してくれ」と懇願するのはおかしい。きっと自分で自分のことを認められてないから、他人に自分のことを認めてもらいたいと思うんじゃないかな。そうして、自分の存在価値を見出そうとしているんじゃないかと。

 

 

全体を通して、この本はすばらしくおもしろかった。二人ともとても賢い方で、的確に問題の本質を見抜いている。賢いからこそ、自分自身のマイノリティ性をしっかり自覚し、その上でどう他者と付き合っていくかを身に付けてきたのだろう。

 

僕は自分自身がマイノリティな人間なのかよく分からない。マジョリティな人間がマイノリティの振りをして、「自分は特別」と思い込んでいるのかもしれないし、実際にマイノリティなところがあるのかもしれない。

 

どちらにせよ、マツコさんと池田さんというマイノリティ人間に強く惹かれたことは間違いない。出る杭は打たれる日本という国で「ヘンな人」としてたくましく、そして自分らしく生きる二人に憧れる。

 

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