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ひきこもる若者たちのメンタリティ-『ポストモラトリアム時代の若者たち』

『ポストモラトリアム時代の若者たち』という本を読んでいる。3月にリバハチに行ったときに、管理人の方にオススメしてもらった本だ。まだ読み切っていないけど、なかなかおもしろい。

 

この本は、現代の若者の心理状態を的確に分析している。とくに、タイトルにもあるように、ポストモラトリアムという心理状態について詳しく書かれている。ポストモラトリアムとは、自己不確実感、無関心、自己責任、自立することへの不安、などといった現代の若者が抱える心理状態を表す言葉。

 

この本の第3章では、ひきこもる若者たちのメンタリティについて書かれている。この部分の内容がすばらしい。こんなにも的確に、ひきこもる若者の心理状態を分析している本はない、と思うほど。あまりにすばらしいので、ちょっと紹介したい。

 

筆者は、若者がひきこもりに至る道筋のなかで代表的なものを3つ挙げている。

 

1つは、いじめられ体験から。酷い暴力や中傷、または無視されるなどといった体験から、ひきこもりに至るパターン。

 

2つめは、気がついたら居場所がなくなっていた、というパターン。中学、高校、大学と問題なく進学してきてはいるのだが、その間、ほとんど友人がおらず、孤立していたという若者もひきこもりに至る。

 

3つめは、就職からの無業、そしてひきこもりへ、というパターン。卒業後、就職したものの、企業の一方的な理由、理不尽な扱いで退職を強いられる若者が増えているそうだ。無業状態となり、心を傷つけられ、ひきこもりに至る。

 

どのパターンにせよ、ひきこもる若者たちに共通しているのは、長い間、無力感を感じて過ごしてきた、ということ。安心できる居場所、居心地のよい居場所がないことで、孤立し、追い詰められ、さまようことになる。

 

では、ひきこもりの若者たちはいったいどんな心理状態にあるのか。筆者によると、ひきこもりの若者の多くが、「自分はふつうではない」と言うそうだ。

 

長いあいだにわたって孤立無援な状態におかれると、たんに孤独や不安に苛まれるというだけではなく、人間としての尊厳が傷つけられていく。彼らは社会に対する信頼感を失うだけではなく、自分自身への信頼感をも失っていくのである。実際には、彼らの多くは今どきの若者らしいファッションに身を包み、今風の若者であるにもかかわらず、彼らは自分のことをふつうに見えないと確信しているのである。 

 

彼らはなぜ「自分はふつうではない」と確信しているのか。それを説明するのに有効なキーワードがふたつある。それは「スティグマ化」と「トラウマ化」だ。それぞれ簡単に説明すると、

 

他者の期待する「ふつう」の範囲に自分の属性が含まれていないと感じるときに劣等感と羞恥心を生じさせるものを本書ではスティグマと呼び、それによって「内なる他者」が登場する。つねに自分のことを監視しているような目に見えない存在であり、それによって、自分は劣っている、という感覚を強くさせる。それがスティグマ化。

 

トラウマ化とは、過去の対人関係での傷ついた体験に必要以上に囚われ、それさえなければもっといい人生を送れていたはずだ、と考えるプロセスのこと。スティグマ化では「内なる他者」に囚われていたが、トラウマ化では「過去の亡霊」に囚われている。 

 

スティグマ化とトラウマ化によって、ひきこもる若者たちは未来へ進むことも、過去から抜け出すこともできなくなっている。

 

彼らの心は、「もし否定されたらどうなるのか」という過剰な不安に満ちた未来と、「あれさえなかったら、うまくいってた」という仮定された過去という、いずれにしても非現実的な時間のなかでさまよい続けている。

 

僕の場合、ひきこもりになる2つめのパターンに近い。一見、ふつうの学生として進学してきたが、だんだん「自分はふつうではない」という劣等感が増していき、むなしさが心をうずまくようになる。まじめ系クズに通ずるものがある。

 

そして、たしかに「内なる他者」と「過去の亡霊」に囚われている。バイトしてないことなんかを引け目に感じ、中学時代は輝いていたのに、部活ではヒーローだったのに、と過去の栄光を異常に美化してすがっている。

 

まだ最後まで読んでいないけど、このひきこもりの若者のメンタリティについての箇所がとてもすばらしかったので書いてみた。ただ、あんまりうまくまとめられなかったので、ちゃんと読みたい人は本を手に取ってほしい。大学生だったら、大学の図書館にある可能性もある。

 

最後まで読んだら、また感想を書きたい。

 

ポストモラトリアム時代の若者たち (社会的排除を超えて)

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