生きづらいふ

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はじめてのおつかい

最近、やたらとおつかいに行っている。ちょっと散歩に出るついでに、母親に「なんか買ってくるものある?」と聞くと、「じゃあ、○○と××買ってきて」という感じで頼まれるからだ。

 

おつかいの道中、ふと僕にとってのはじめてのおつかいの記憶がよみがえってきた。というわけで、今日はえんぴつ少年のハラハラドキドキのはじめてのおつかいをお届けしよう。

 

4~5歳くらいだったと思う。幼稚園児のえんぴつ少年は、居間でなにやらパパとママが買い物に行く話をしているのを耳にした。どうやら近所のスーパーに行って食材やらなんやらを買ってくるようだ。両親からすこし離れたところで盗み聞きをするようにその会話を聞いていた。

 

そしてなにを思ったのか、突然えんぴつ少年は「僕が代わりに買い物に行ってきてあげよう」と考えた。いままで一人で買い物などしたこともないのに、なぞの使命感を感じていた。これは僕がやるべき仕事なのだ、と。

 

そしてえんぴつ少年は両親に気づかれないようにひとりでこっそりと家を飛び出した。さあ、パパとママ待っててね!いまから僕が代わりに買ってくるから!と。しかし彼は大事なものを忘れていた。お金を一切持っていなかったのだ。

 

そんなことはおかまいなしに近所のスーパーへ向かってずんずんと歩みを進めていく幼い僕。両親を驚かせてやろうと意気揚々と歩いていた。しばらく歩いていると、うしろから母親が走って追いかけてくるではないか。

 

「どこに行くの!?」と母親。「買い物に行くって言ってたから...」と僕。

「行ってきてくれるの?」と母が聞くと、「うん」と僕はうなずいた。そして、母は僕に1000円だか2000円だかを渡し、「じゃあ、○○と××と...を買ってきてくれる?」とおつかいを頼んだ。

 

そして僕はくるりと母に背を向け、スーパーへと歩みを再開した。スーパーへつくと、言われた通りのものを探した。正直、なにを買ったのかいまいち覚えていないが、たしか卵と豆腐と牛乳を頼まれていた記憶がある。卵と豆腐を無事に見つけ、かごにいれた。

 

しかし、牛乳が見当たらない。紙パックのコーナーを見ても牛乳がない。これは困った。どうしたものか。ここはどうしても両親の期待に応えたかった僕は紙パックのリンゴジュースを買うことで妥協した。そして僕は無事に会計を済ませた。

 

帰り道、ちょっと重たい袋を腕にぶら下げながら家路へとついた。僕のはじめてのおつかいは無事に成功したのだった。

 

これは数年後に母から聞いた話だが、僕におつかいを頼んだあと、母はずっと僕の後をつけていたらしい。それもそうだ、息子のはじめてのおつかいだ。気が気ではなかっただろう。

 

テレビでたまにやっている「はじめてのおつかい」を見ると、多くの大人が感涙するらしいが、僕はまさか自分のはじめてのおつかいエピソードをブログに書いて、泣きそうになるとは思わなかった...。あまりに健気な昔の自分に思わず心が揺さぶられてしまった。