生きづらいふ

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ほどよい距離感の対人関係を築くには/『嫌われる勇気』

いまさらながら、『嫌われる勇気』を読んだ。発売当初からずっと読みたいと思っていた本。なかなか手に入れる機会がなかったが、とある友人から貸していただいたのでやっと読むことができた。

 

生きづらさを感じていて、それをなんとかしたいと思っている人なら、この本に興味を持つだろうと思う。僕もその一人だった。実際に読んでみて、たくさんの気付きや、新しい考え方を手に入れることができた。

 

この本は哲人と青年の対話形式で進められる本。青年はもうまさしく僕のような人間で、自己嫌悪を繰り返し、人生の生き方が分からなくなっているような人。そんな青年が、「世界はどこまでもシンプルである」と説く哲人のもとを訪ね、人生について議論していく。

 

この本のタイトルは『嫌われる勇気』。これはいったいなにを意味するか。

 

 「自由とは他者から嫌われることである」…他者の評価を気にかけず、他者から嫌われることを怖れず、承認されないかもしれないというコストを支払わないかぎり、自分の生き方を貫くことはできない。つまり、自由になれないのです。…幸せになる勇気には、「嫌われる勇気」も含まれます。

 

他者に嫌われることばかりを怖れて、他者の期待を満たす生き方をしていては自由にはなれない。「嫌われてしまうかもしれない」というリスクを犯してでも、自分の生き方を貫く。「嫌われる勇気」を持ったときにこそ、人は自由になれるし、幸せになれるのだ、ということ。

 

しかし「嫌われる勇気」を持つのはむずかしい。誰だって、嫌われたくないし、承認されたいと思っている。だが、哲人は承認欲求を否定する。他者に承認される必要などないのだと言い放つ。嫌われることを怖れないということは、傍若無人にふるまうということか?いやそれも違う、と哲人はいう。

 

傍若無人に振る舞うのではありません。ここを理解するには、「課題の分離」という考え方を知る必要があります。...われわれは「これは誰の課題なのか?」という視点から、自分の課題と他者の課題とを分離していく必要があるのです。…あらゆる対人関係のトラブルは、他者の課題に土足で踏み込むこと、あるいは自分の課題に土足で踏み込まれることによって引き起こされます 。 

 

誰の課題かを見分ける方法はシンプルです。「その選択によってもたらされる結末を最終的に引き受けるのは誰か」を考えてください。

 

本のなかでは、勉強をしない子どもと勉強をさせようとする親の関係が例として持ち出されている。この場合、勉強をするかしないかは、子どもの課題であって、親は介入すべきではないという話になる。なぜなら、勉強をする/しないという選択によって、利益/不利益を被るのは子ども自身だから。

 

しかしこれでは、子どもを放任する親になってしまう。それについて哲人はこういう。

 

放任とは、子どもがなにをしているのか知らない、知ろうともしない、という態度です。そうではなく、子どもがなにをしているのか知った上で、見守ること。 

 

親は子どもをコントロールしようとせず、あくまで見守るだけ。しかし、いつでも援助する、という姿勢は見せる。勉強をする/しないは子どもの課題だから、親はそこに介入してはならないのだ。

 

なんだか納得いくようでいかないような話だ。そんなことを言っていたら、人間関係が冷たくなっていってしまうのではないか?という気もする。しかし、ふと思ったのだけど、依然僕は「落合博満さんや坂上忍さん」のような人が好きだといった。考えてみると、僕が彼らを好きなのは、「彼らは課題の分離ができている」からなのかもしれない。

 

二人は毒舌っぽいところがあり、自分の主張を「嫌われることを怖れず」、言ってのける。そこが嫌いだ、という人も多いと思う。落合さんに関しては、『なぜ日本人は落合博満が嫌いか?』という本も出ているくらいだ。読んだことはないので、内容はまったく分からないが。

 

そんなタイトルの本が出るほど、「課題の分離」という一見、冷酷な人間関係は日本人には受け入れがたいのかもしれない。集団主義で、絆を大切にする日本人には理解しがたいことなのかもしれない。しかし、この『嫌われる勇気』がこれだけベストセラーとなり、坂上忍があれだけテレビに出ていることから、だんだんと「密着しすぎた人間関係」から離れようとしている人が増えているということがうかがえる。

 

自分の課題、と他者の課題をしっかり見分け、そこに線を引く。そこにはほどよい距離感の人間関係が生まれる。それを心地よいと感じる人が多いか、少ないかは分からないけど、確実に増えていっているんじゃないか、とは思う。

 

...今回は『嫌われる勇気』のなかから、「課題の分離」を取り上げて書評を書いた。また後日、別の内容を取り上げて、書評を書くかもしれない。それほど、内容の充実した本だったので。

 

*引用箇所は、一部文章を省略しています。

 

嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え

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なぜ日本人は落合博満が嫌いか? (角川oneテーマ21)

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